都会で忙しく働いていた日々から一転、自然あふれる本山町へと移住した俊介さんと優子さん。
それぞれ違うきっかけでこの町にやって来たお二人は、移住者同士の出会いからご縁を深め、今は娘さんと家族3人で暮らしています。
都会とはまったく異なる時間の流れや、人とのつながりの温かさに支えられながら、移住したからこそ出会えた日常を送っています。

稲葉 俊佑(いなば しゅんすけ)さん / 2017年12月 本山町移住
稲葉 優子(いなば ゆうこ)さん / 2017年春 本山町移住
都会から地方へ。心地よさを求めて嶺北へ
―――本山町に移住したきっかけは?
優子さん
30代前半の頃は、東京の会社で働きながら一人暮らしをしていました。残業も多くて、結婚願望もそれなりにありましたが、日々の忙しさやご縁がなくて。「この生活、このままでいいのかな…」と悩んでいた時期でもありましたね。
そんな時に参加したのが、2015年の“家づくり教習所”というイベントです。主催していたのが高知の設計士さんで、そのご縁から1年ほどその方のもとで働かせてもらうことに。ちょうど地方での暮らしにも興味を持ち始めていた頃だったので、「高知って面白そう!」と思って、まずは高知市に移住しました。
実はそのイベントをきっかけに、私と同じように高知へ移住した人が何人もいて、そのうちの数人が嶺北に住んでいたんです。それで私もよく遊びに行くようになりました。友人たちは地元の人と一緒に味噌を作ったり、狩猟に挑戦したり、本当に新鮮で面白くて。
高知市に来たばかりの頃はいろんなことが新鮮でしたが、住んでみると大型商業施設や住宅街があって、東京の暮らしとそこまで大きくは変わらないな、と感じてしまって…。
その点、嶺北には店は少ないけれど、山や川、棚田などのどかな景色が広がっていて、人との距離も近い。自分にとってはその心地よさが魅力で、とても気に入ったんです。
ちょうどその頃、高知県が耐震改修を進めていく時期でもあり、その補助を活用した仕事をいただけることが多かったので、嶺北、本山町に来るタイミングで独立することにしました。
山と暮らしを結ぶ場所を求めて
―――俊佑さんはどうでしたか?
俊佑さん
僕の場合は、東京で参加した移住相談会がきっかけでした。もともと旅行会社に13年ほど勤めていたんですが、毎日の生活に疲れきってしまって…。仕事を辞めてからは「これから何をしようかな」と模索していたんです。
山登りが趣味だったので、「山に関わることと仕事を組み合わせられないかな」と考えて思いついたのが“林業”でした。ちょうどその頃、自伐型林業が注目されていて。移住する前に高知へ旅行で来たこともあったんですが、お酒も美味しいし、自然も豊かで「すごくいい土地だな」と感じていたんです。山も多いし、「林業をやるなら高知がぴったりだ」と思うようになり、東京で開かれた移住相談会に参加しました。
そこで「高知に移住したい、林業をやってみたい」と話していたら、藤川工務店の代表に出会って。今関わっている“山番”を紹介していただけることになり、そのご縁で移住が決まりました。
最初は住む家がなかったので、見つかるまでは藤川工務店でバイトをさせてもらい、その後“山番LLP”のメンバーとして働き始めました。今は本山町の山を中心に、間伐や造林など山の手入れをする仕事をしています。これまでとはまったく違う仕事ですが、山の中で汗をかいて、外でお昼を食べて…本当に気持ちがよくて。最初から抵抗もなく、楽しみながら仕事を続けられていますね。
都会では得られなかった、“ご縁”との出会い
―――お二人は本山町で出会ったんですか?
優子さん
そうなんです。主人と出会ったのは、彼が移住してきてすぐくらいですね。移住者同士で時々飲み会が開かれることがあって、「こういう人が新しく移住してきたんだよ」って紹介される場で知り合いました。
それまでいろんな人とお付き合いはしてきましたが、なかなか「気が合うな」と思える人に出会うことはなくて。でも、同じように移住してきた人って、やっぱり感性が近いところがあるんでしょうね。主人とはすぐに打ち解けました。
知り合って半年でお付き合いを始めて、その一年半後には結婚。ありがたいことに子宝にも恵まれて、今はもうすぐ5歳になる娘と3人で暮らしています。
振り返ってみると、ただ職場や学校といった環境だけでは、その人となりを知るのってなかなか難しいんですよね。でもここでは、自然と人柄に触れられる機会があって、気持ちが動く出会いがある。都会では得がたい、そんな出会いの場が実は多いんじゃないかなって思います。
仲間や家族との出会いがつくる、充実の暮らし
―――本山町に移住した当時を振り返ってみてどうですか?
俊佑さん
いやぁ、もしあのまま都会にいたらどうなっていたんでしょうね。あの頃は仕事も本当に忙しくて、結婚のことなんて考えもしなかったので、きっとずっと一人でいたんじゃないかなと思います。都会にいた時は、日付が変わってようやく家に帰るなんてことも珍しくなかったんです。でも今は、仕事を終えて17時とか18時には家にいられる。娘との時間もちゃんと持てるし、好きなお酒も時間を気にせず飲める。生活のリズムがガラッと変わりましたね。
もちろん合う・合わないはあると思うんですけど、自分の場合は思い切って動いてみて良かったです。移住相談会に行って、藤川工務店さんと出会ったことがきっかけで移住が決まって。そこから妻や娘、そして一緒に林業をしている仲間たちとも出会えました。今は本当に充実した暮らしを送れていますよ。





