「お米って日本人の暮らしそのものですよね」
そう話すのは、高知県本山町で米糀や発酵調味料づくりに取り組んでいる尾崎未夏さん。
もともとは高知とは縁のない横浜生まれ。結婚を機に埼玉県へ移り住み、そこからさらに本山町へと生活の場を移しました。
無農薬の野菜を自分で育てたい、もっと自然に近い場所で暮らしたい。そんな思いでたどり着いた本山町で、尾崎さんはお米の新たな魅力に出会います。
調理師として培った「素材を活かす」というこだわりと、お米の産地だからこそできるものづくり。本山町で暮らしながらお米と発酵に日々向き合っている尾崎さんに、お米にかける思いと、本山町での暮らしぶりについてじっくりお話を伺いました。

尾崎 未夏(おざき みか)さん/本山町移住
「自然の近くで暮らしたい」その思いを追いかけて
尾崎さんは横浜生まれの横浜育ち。ばりばりの都会っ子ですが、もともと都会の暮らしよりも自然の近くでの生活に憧れを抱いていたそう。
「あまり向こうでの生活が得意ではなくて。全部揃っていて便利ではありましたけど、街に臭いがあったり、海も川もきれいではなかったり…。」
そんな思いもあって、結婚後移り住んだ埼玉県の自宅は、周りを田んぼに囲まれているような場所を選びました。横浜に比べ自然が豊かな環境ということもあり、家庭菜園を楽しむ日々を過ごしていたという尾崎さん。次第に、無農薬栽培に関心を持つようになります。
「自分たちが無農薬で育てた野菜を食べるようになって、市販のものとの味の違いに驚いたんです。」
ですが、周りの田んぼでは農薬が使われるのが当たり前。農薬は風で流れてくるので、ここでは本当の無農薬栽培ができない。「その頃から、無農薬栽培ができるような田舎で暮らしたいと思うようになりました。」
同じ思いを抱いていた夫とともに各地を巡り移住先を探す中、ふと目に留まったのが高知県本山町。豊かな自然がありながら、病院やスーパーなど生活に必要な施設も揃う「ちょうどいい田舎」具合に惹かれたと言います。自然と利便性のバランスの良さが、本山町への移住を後押ししました。

地域に広がる棚田

米を天日干ししている様子
今調理師時代に大切にしていたのは「素材を活かす」ということ
移住前は社員寮の食堂で調理師として働いていた尾崎さん。ずっと大切にしてきたことがあります。
「実は昔から化学調味料が苦手で。料理を提供する立場としては、手間はかかってもおいしいものを食べてもらいたいから、できるだけ素材の味を活かして調理していました。仕事として考えると効率は悪いのかもしれませんね。」
そう笑う尾崎さんは、食堂では塩糀などの発酵調味料を取り入れるなどして、素材本来の旨味を引き出す工夫を続けていました。おかげで料理の評判は上々だったそう。
「社員寮で一番の古株の方から『歴代の料理人のなかで、あなたの料理が一番おいしかった。絶対料理の道から外れちゃダメだ』と言ってくれて。ありがたかったです。」
調理師だった頃から米糀が身近ではあった尾崎さんですが、米糀そのものを作るようになったのは本山町へ移住してから。お米の産地で暮らすようになり、「米どころで暮らしているんだから、お米を活かしたものを何かつくれないか」と考えた結果、無農薬のお米を使い自ら糀菌を付けて発酵させる、米糀づくりを思いついたといいます。
この米糀づくり、温度や湿度の繊細な管理が必要で、糀菌のつき方などで味に大きく差が出るのだそう。理想の仕上がりにたどり着くまで、尾崎さんは何度も試行錯誤を重ねていきます。自分の納得できる基準に満たないと感じたら、出荷をストップすることも。“妥協しない”という姿勢は、調理師時代から変わらない「良いものを届けたい」という尾崎さんのこだわりでもあったのです。

調理師時代の料理

無農薬のお米でつくった米糀
お米が広げる発酵の世界
日本食に欠かせないみりん、日本酒、甘酒、味噌、塩糀、醤油。これらの調味料、実はお米からできる糀を使って作られています。
普段は主食として口にしているごはんが、実は食卓に並ぶ和食全てに使われている。そう考えると、お米は日本人の暮らしと切っても切れない存在だということが、よくわかります。
尾崎さんは現在、玉ねぎと米を発酵させて作る糀なども手づくりしているそう。
「玉ねぎも米も両方発酵するので旨味も甘味も風味も増すんです。コンソメのような使い方ができるので、これを肉まんや煮込み料理、お弁当のおかずなどに使うと味に深みが出て。化学調味料に頼らなくても、十分旨味の強いお料理になります」と教えてくれました。
他にも、トマトを使った発酵調味料づくりにも挑戦しているという尾崎さん。
「化学調味料を使わない調味料づくり」といった講座や、自作の塩糀を使ったお料理教室もときどき開催しているそうです。
「発酵って昔からある知恵なんですけど、現代の料理にも十分活かせるのが面白いですよね」
自然を求めてたどり着いた本山町で、お米と出会い、発酵の世界に足を踏み入れた尾崎さん。その丁寧にお米と発酵に向き合うその姿から、「お米は、日本人の暮らしそのもの」という言葉の意味が見えてくるようでした。

発酵調味料を使ったお弁当

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