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無農薬米に挑戦中!米作り一年生・前田さんがめざすものとは

高知県の山あいに位置する大豊町。大阪から移住し5年目を迎える前田さんは、人口約2,800人のこの町に週末限定の食堂をひらきました。「すべての人に安全で美味しい食事を提供したい。」その思いのとおり、ここで提供されるのは米粉を使ったたこ焼きや、使用する調味料や素材にこだわった麻婆豆腐など、前田さんの愛情がつまったものばかり。

そんな前田さんは今、田んぼを借りて無農薬のお米作りにも挑戦中。また、食堂で提供するための新しい商品の開発にも乗り出しているそうです。どこまでも理想を追い求めて前進する前田さんには、普段私たちが何気なく口にしている“食べ物”に対してのある思いがありました。

前田 美穂(まえだ みほ)さん/大豊町移住

こだわったのは「安心とおいしいをひとつに」ということ。

大豊町に移住してきた当初は、食堂を立ち上げるつもりはなかったという前田さん。転機は急に訪れます。

ある日偶然目にしたのは、アレルギーによって体を掻きむしる子どもと、それを𠮟る母親の姿でした。その親子の姿から透けて見えたのは、食べたいものを食べられず我慢を強いられ、口にするものすべてに注意を払わないといけない生活。自身もアレルギーの症状に悩まされてきたこともあり、その大変さはよく分かっています。

その光景を目にしてからというもの、「もしかすると、本人や親御さんが気づかないうちに、普段何気なく口にしている食べ物によって引き起こされているアレルギーがあるのではないか?」といつしか考えるように。

自身の進むべき道が見えてきたのは、「大豊町にはご飯屋さんが少ないから、自分たちでやってみる?」という友人との何気ない会話がきっかけでした。その何気ない一言が、前田さんの頭の中であの日の親子の姿と結びつきます。地域の人に空いている物件を紹介してもらうなど準備を進め、2024年9月に食堂をオープン。アレルギーの原因となる化学調味料や卵、小麦粉などをなるべく使わない料理を提供する、みずがめ食堂の誕生でした。

「とにかく米やな、米を作らな」

お店で提供する食事は、使用する素材・調味料ともにできる限り市販のものに頼らないよう試行錯誤を重ねています。「美味しいものは市販の化学調味料を使ったら簡単にできるけど、目指すのはそこだけじゃない。これ食べたらかゆくなるな、ということが一切ないような食事を作りたい」と真剣な表情で語る前田さん。

その言葉のとおり、看板メニューの一つであるたこ焼きには、小麦粉ではなくれいほく地域で生産されている米粉を使用。もう一つの看板メニューである麻婆豆腐定食にも大豊町産のお米を用い、その他にも山椒、生姜、ニンニク、ネギなど地域の食材を取り入れています。

みずがめ食堂において最も重要なポジションにいるといっても過言ではないお米。だからこそ、「どんな風に作られているんやろうか」「自分でも作れるんやろうか」とお米に対する興味が日に日に増していったと言います。これまで田んぼに入った経験はほぼゼロ。当然、お米作りの知識もありません。それでも「とにかく米を作らな!」という思いが募り、米作り一年生としての挑戦が始まりました。

みずがめ食堂

看板メニューの米粉たこ焼き

モグラ、雑草、イノシシ。米作り一年生の奮闘記

今年2月、前田さんは初めての米作りをスタートさせました。地域の人が貸してくれた田んぼは約1,500㎡。素人にはやや広すぎるであろう規模の田んぼを初めて目にした時は、何もわからずわくわくする気持ちでいっぱいでしたと笑う前田さん。試行錯誤だらけの毎日に足を踏み出しました。

米作りはまず、田植えをできるように田んぼに水を張ることから始まります。「それが、水がたまらないんですよ。何度耕しても」

原因を探ると、モグラなどの動物が開けた穴から水が抜けていることが判明。しかも、穴は一つではありません。地域の人に教わりながら一つずつふさぎ、ようやく田植えができる状態になったのは5月もそろそろ終わる頃。ゴールデンウィークには田植えをと計画していましたが、大きく遅れを取ってしまいました。

田植えは無事に終わりましたが、次は雑草との戦いが始まります。無農薬で育てると決めたため、除草剤には頼りません。田植え後すぐに梅雨入りとなってしまったため、雑草はぐんぐん成長。雨がやんだ隙を見て、草を引いても次の日にはもう生えてきます。抜いても抜いても追いつかず、仕事を終えた後に田んぼへ向かい、1か月間休むことなく毎日1~2時間、一本ずつ草を抜く日々が続きました。

また、前田さんを苦しめたのは雑草だけではありませんでした。いもち病やカメムシの被害が発生し、収穫が近づく頃にはイノシシも姿を現しました。一つの課題をやっとの思いで乗り越えると、また次の課題が立ちはだかる。まさに、米作り一年生ならではの試行錯誤の連続です。

それでも「なるほど、米作りってこういうことなんや」と学びを得た前田さん。実際にやってみたからこそ分かることがたくさんありました。本当に収穫できるのかといった不安を抱えながらも、地域の人たちに教わり、一つずつ経験を積み重ねています。

水のたまらない田んぼ

雑草と共生する稲

さあ、次の挑戦へ。

「お米を使えば、自分が使いたくない食材を使わずにお菓子や料理が提供できる。」アレルギーに悩む親子をきっかけに始まった挑戦でしたが、前田さんはすでに次の準備を進めています。

 それは、米粉を使ったお菓子や、地元産の野菜を使った加工品を手作りすること。実際に菓子製造業などの許可も取得し、食材にできそうな野菜を作る方とも偶然つながることができたそう。

「もうこれはやった方がいいという流れやなと」そう笑う前田さんの眼差しは、そろそろ収穫の時期を迎える自分のお米が、どのような形でたくさんの人に届けられるか、その先を見据えているようです。 何かを始めたら、また次のやりたいことが見えてくる。来年の米作りはこうしよう、できたお米で次は何を作ろう。今日も前田さんの頭の中はフル回転で、次の挑戦に思いを巡らせています。

収穫期が近づく

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