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地域とともに育つ学びのかたち。嶺北高校魅力化プロジェクトの“自分で選ぶ高校生活”

“小さな町の高校”から、全国に注目される教育のかたちが生まれています。
山々に囲まれた高知県嶺北地域。その中心にある嶺北高校には、今、町と高校、そして生徒たちが一緒に未来を描く“新しい学びのかたち”が広がっています。

それを支えているのが「嶺北高校魅力化プロジェクト」。
地域と協力しながら、生徒たちの“主体的に学ぶ力”を育てています。今回は、プロジェクトを運営する「一般社団法人れいほく未来創造協議会」の岡田事務局長にお話を伺いました。

―――このプロジェクトは、どのように始まったのでしょうか?

岡田事務局長

きっかけは“この高校を残したい”という地域の想いでした。
当時、高知県では入学者数が20名を下回ると統廃合の対象になると、数年前から言われていて、ここ嶺北高校も平成30年に生徒数が17人まで減ってしまって…。このままでは…という危機感から、「残すため」ではなく「選ばれる高校にしよう」と動き始めました。

維持や存続のための取り組みではなく、“魅⼒的な学校づくり”で選んでもらえる⾼校を⽬指す。それが僕たちの⾏っている「嶺北高校魅力化プロジェクト」です。

嶺北高校の“魅力化”に向けた動きは、もともと地域の草の根的な取組から始まったんです。これが母体となる形で、平成31年に「嶺北高校魅力化プロジェクト」と名前がつきました。現在は法人化し、約10名のスタッフで運営しています。


―――活動の初期に取り組まれたことは?

岡田事務局長

魅力化プロジェクトとして最初に取り組んだのは、“地域外からの生徒募集”でした。生徒数の確保ということはもちろんですが、保育園から中学校まで全く同じ関係性の中で育ってきた地元の子どもたちに向けて、多様で魅力ある学びの環境をつくっていくこと、それがこの目的です。

地域外の生徒を迎えるために、まず取り組んだのは“暮らしの場”の整備。
最初は、地域の空き家を改修して住んでもらっていました。2年間続けて一定の生徒が地域外から来るようになったことを受け、令和3年の春、土佐町と本山町の出資で現在の寮塾複合施設「れいほく教育魅力化・交流支援センター(愛称:とまり木)」が完成しました。

高校生と地域をつなぐ拠点を目指してつくられた場所。とまり木はまさに、その中心になっています。



―――実際、どんな活動をされているんですか?

岡田事務局長

とまり木での寮運営、公営塾の運営、そして地域外からの生徒募集。それに加えて、高校の授業として「探究学習」にも関わっています。嶺北高校では、総合的な探究の授業を「嶺北探究」と銘打っていて、生徒自身の興味と地域の課題をかけ合わせたプロジェクトを生徒が自らの手で進めていく、そんな学びのカタチを目指しています。

1年生は学年全体で共通のテーマをもって探究を進めます。去年は「市街地の活性化」、今年は、「ふるさと納税寄付額を増やすには?」といった具合です。2年生になると、テーマの設定から完全に生徒主体でプロジェクトを進めていきます。

最初は“何をしたらいいか分からない”と戸惑う生徒も多いんですが、やっていくうちに自分の興味と地域の課題がリンクしてくるんですよね。“好き”を出発点に、社会の中で形にしていく。それが探究の魅力だと思います。



―――“とまり木”はどんな場所になっているのでしょうか?

岡田事務局長

こことまり木には、現在約30人の生徒が暮らしています。

寮は、その立ち上げ時から、生徒自身が主体となって寮生活をつくり上げる「自治的な寮運営」を目指してきました。

 月に一度の寮会議では、日々の生活の中で感じたことや課題を持ち寄り、生徒同士で話し合いながら、ルールや運営のあり方を決めていきます。誰かに指示されるのではなく、自分たちで考え、決め、実行する。このプロセスの積み重ねが、責任感や当事者意識を育んでいきます。

この取り組みを支える存在として、ハウスマスターという大人の存在があります。一言で言えば、生徒の伴走者といったところでしょうか。日々のサポートや相談を通じて、自治的な寮運営を支えています。

また、私たちは生徒の“主体性”を大切にしているので、月に一度の寮会議を開き、生徒自身で運営ルールを決める「自治寮」を目指しています。“やらされる”のではなく、“自分たちで決めてやる”。その経験の積み重ねが、自然に責任感を育てていると思います。



―――塾も併設されているそうですね。

岡田事務局長

公営塾“燈心嶺”は 、“すべての生徒が主体的に自己実現できる学びの場”をコンセプトに、嶺北高校生なら誰でも無料で通える塾として、とまり木で開講しています。

もともとは学校の空き教室を借りて始めた小さな塾でしたが、今では登録者が60人ほど。平日は学校終わりの16時から21時まで開放していて、特に試験期間は放課後に自習や質問をしに来る生徒でにぎわっています。

この数年で、広島大学や同志社大学、慶應義塾大学などへの進学者も出てきました。全国的に見ても「燈心嶺」のような施設はありますが、ここまで成果を上げている例はそう多くないかもしれません。

とはいえ、私たちの目的は“進学実績を上げる”ことではなく、“生徒が自ら選んだ進路の実現を全力で後押し”すること。それぞれの夢に合わせて、学びを支えたいと思っています。



―――プロジェクト全体を通して、大切にしていることは?

岡田事務局長

“魅力化=派手なことをやる”ということではないと思っているんです。生徒が“自分で考えて、自分で選ぶ”経験を支えること。その過程で、地域や人と関わる力が育っていく。その力を信じて支え、見守ることが、私たちの役割だと思っています。



―――最後に、これからの目標を教えてください。

岡田事務局長

目標ということでいうと、学校はもちろん、地域そのものがより魅力的になっていくような、そんなプロジェクトを高校生と一緒にできたらいいなと思っています。

そうしたプロジェクト(≒生徒が実現したいこと)を通じて、自身のあり様や生き方について、生徒も関わる大人たちも一緒に考えていくような、そんな姿を目指しています。


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